イスタンブールのトルコ人



中東旅行記

~久しぶり~

ジャスミンとギュルシンは以前イスタンブールに来たときに知り合った友達だ。

僕はイスタンブールを離れた後もこの二人とは何回かチャットをしていた。彼女らは本当に優しく純粋で、僕はこのトルコ人女性と仲良くなった。

そんな彼女らと再会するのを楽しみにしていた。

ギュルシンと再開したのはタクシムにあるバーガーキングの前だった。ちょっとだけ手違いがあって入れ違いになったけれど、何とか再開できた。僕は彼女と一緒にご飯を食べて、お洒落なレストランでビールを飲んだ。彼女はとても頭のいい、所謂インテリで、英語での会話を楽しんだ。

彼女はとても優しく、ビールをおごってくれ、そして僕の旅に好奇心を持ってくれていた。

彼女は子供がいる。僕と同じくらいの年齢にもかかわらず、どこか大人だった。自分とはまったく違う生活をしている、トルコと言うまったく違う国の人なのに、話は進んだ。

「あなたは幸せよ。たとえ道で寝ることがあっても。」と以前にチャットでメッセージをくれたのは彼女だった。僕はビールをおごってくれた以上に、彼女のこの言葉に深い感謝をしていた。

ありがとう。

-

比べるのは筋違いなのかもしれないが、ジャスミンはトルコ人の中でも、むしろ全世界の中でも最高の友達の一人だ。

僕はジャスミンとの再会を果たすためにトルガと一緒にタクシム広場に向かった。ジャスミンは僕を見つけるなり抱きついてきた。僕も彼女に抱きつき、頬と頬でキスをした。泣きそうになるほどうれしくなった。彼女はまさに僕の親友なのだ。

僕らはトルコ名物ドネルケバブを食べ、アイランというトルコならではのヨーグルトを飲んだ。アイランとチャイは僕にとって、ノスタルジーに浸らせた。嬉しさと寂しさと、よくわからない、日曜日の夕暮れのような感覚が訪れた。

トルガは英語が話せないがジャスミンは英語で彼の言っていることを翻訳してくれ、僕らは楽しく話した。3人でトルコの歴史的な街並みが見えるあまり綺麗とは言えないバーの外でビールを飲みながら、僕はいつものように酔っ払い、ジャスミンとじゃれあい、トルガに笑顔ではにかんだ。

トルガとジャスミンはこぞって僕にご飯やビールをおごってくれようとした。僕はどうしていいかわらかないくらいうれしくて、何度も泣きそうになりながら「ありがとう。ありがとう」と言った。トルコ人の尋常ではないやさしさ、愛情、思いやりは表現できないほど僕に伝わってきた。

ジャスミンとは数日後に二人だけで会った。その日はトルコで大規模なデモが発生していて、道が通れず僕は遅刻した。ジャスミンはちょっとだけ怒っていたが、僕はまた彼女とじゃれ合うことで彼女の機嫌はいつのまにか直っていた。

トルコ料理を食べ、カフェでチャイを飲みながらのんびりとする。それだけで僕は幸せだった。ヨーロッパにはない温かみを感じた。このアザーンがなり、モスクがいたるところに聳え、伝統的なイスラム教徒も、ヨーロッパのようなモダンな人々も幸せそうに歩いているこの中東の大都市で、僕はトルコ人と一緒にグダグダと人生について語り合っていた。

カフェからでてタクシム広場に行った。ここは、僕がジャスミンとはじめて出会った場所。彼女とは、少なくともこの旅の中では、最後の瞬間になる。時間が来るまで僕は彼女と一緒に座ってじゃれあっていた。もう30歳近いいい大人がまるで子供のようにはしゃぎ会っていた。本当に幸せだった。

僕はヨーロッパでどんなにがんばってもできなかった現地人と心を通わすということを、イスタンブールに来た瞬間にできるようになった。

時間は来た。僕は彼女と別れなければならない。恋人でもない二人がいつまでも一緒にいるわけにもいかない。僕は旅をしている。一箇所にとどまるわけにはいかない。日本に帰ってから今後のことは決める。今はあくまでも、できる限り自分の旅を最後まで全力を尽くしたい。その思いは強かった。

僕と彼女は最後に頬と頬を何回もくっつけて何回もお互いを抱きしめあった。最後にバイバイと言う瞬間、僕は震えた。本気で寂しかった。ヨーロッパでは一切感じなかった感情が、一気に放出された。

彼女もまた、少しだけ震えていた。

「ありがとう。フェイスブックやスカイプがある今、連絡はいつでも取れるから。」僕は最後に言った。僕は常に彼女の味方でいたい。この繊細な心の持ち主の友達でいたい。それだけを願った。

離れ離れになるのが寂しいという感覚は本当に久しぶりだった。出会いは常に別れを伴う。時にそれはつらく悲しい。でも、絶対に出会わないよりも何億倍もマシであるということは知っていた。

トラムに乗って帰った。トラムから見えるガラタ塔、ボスポラス海峡で釣りを楽しむ人々。イスタンブールの風景はいつも変わらない。このアラブとヨーロッパが混ざった街並みはいつきても綺麗だった。

イスタンブールほど街並みが美しく、人の心が綺麗だった街は今までの人生で見たことがない。

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