中米旅行記/グァテマラの強盗



〜グァテマラをスルーした理由〜

メキシコを抜けた瞬間にグァテマラの闇両替たちがやってきた。しつこい客引き、そしてこの暑さがここはメキシコのような先進国ではないということを分からせてくれた。アメリカ大陸では赤道のあるエクアドルが近づくにつれて暑くなり、そして段々と先進国から発展途上国へ行くため、客引きがしつこくなる気がした。

僕は日本円にして3000円ほどのメキシコペソを持っていた。グァテマラの通貨ケツァルに両替する必要はなかったが、エルサルバドルでメキシコペソを両替できるかはわからなかったので、ここでエルサルバドルの通貨であるアメリカドルに両替をしようと考えた。中米の中でエルサルバドル・パナマ・ベリーズの各国は独自の通貨がなく、アメリカドルが流通している。

少量のペソだけをケツァルに両替し、入国税10ケツァルを払った。若干ケツァルが余ったのでインディオのおばちゃんから絞りたてのオレンジジュースを買ったが、何故か交渉することを忘れてしまってメキシコよりも高い値段になった。後になって計算してみると、闇両替でのメキシコペソからアメリカドルへのレートも明らかに悪く僕は全部で500円ほど損をした。

グァテマラ国境

両替をした米ドルでグァテマラシティまでのバスの料金19ドルを払った。

TICAバスはグァテマラシティに向かって走り出した。



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通常、バックパッカーと呼ばれる人たちはグァテマラを一つの拠点として考えている。グァテマラのアンティグアやケツァルナンゴという観光地には、多くのスペイン語学校があり、ここで多くの日本人がスペイン語を勉強している。物価も安く、日本人が沢山集まることにより日本人沈没宿が増え、バンコクのカオサン通りやネパールのタメル地区のような日本人コミュニティーが結成されてしまっているという情報を出会った旅人から聞いたり、ネットで見たりしていた。

僕は旅に出る前にアンティグアのスペイン語学校に行こうとしていた。メキシコ・キューバを旅行し、グァテマラで3ヶ月ほどスペイン語を勉強してからコロンビアに向かってアルゼンチンやブラジルを目指す。バックパッカーの王道ルートである。

いつの間にかどんどんどんどんと予定は変わり、僕はキューバでスペイン語を学んだ。そしてメキシコでも多くの現地人の友達に囲まれ、スペイン語での意思疎通に問題がなくなっていた。キューバで個人の先生に学んだ後、メキシコで学校に行くはずだったがいかなかった。
僕はもう、学校に行く必要はないという判断をしていた。スペイン語を学ぶなら時間をかけてゆっくりと学びたい。そして日本人のいないところで学びたい。実際に今までもそうしてきた。僕はメキシコでもキューバでも現地人との交流をメインにしてきている。

僕はこの残りのラテンアメリカへの滞在のすべてを旅と現地人との交流に集中することに決めた。スペイン語の勉強は独学でやれる。別にテストがあるわけでもない、そして多くの現地人とのパイプは出来上がっている。いまさら学校に行くことの意味はない。日本人に囲まれ、日本語を話しながらスペイン語を勉強するなんて馬鹿げている。そして普通の旅をするにしても今は日本人の沈没宿には絶対に行きたくない。それよりも現地人との交流を大切にしたい。
もし学校に行くのなら本気で、スペイン語の語学力向上・ラテンアメリカの研究という明確な目的を持って行きたい。それは旅とは全然違う種類のものである。

そしてグァテマラは治安の悪さで有名な国である。中米のすべての国で治安は悪いと言われているが、中でもグァテマラの強盗の話は旅人の間で有名だった。グァテマラシティ・ニカラグアのマナグア・ベネズエラのカラカスは中南米でもっとも危険な地域であると言われている。メキシコの日本人宿に数日いたときも、多くの人がグァテマラの強盗の話をしていた。

バスの中に強盗が乗り込み、銃を突きつけ乗客のすべての持ち物を強奪される。街を歩いているといきなり人気のない所に連れ込まれ、首を絞められ意識を失った所で持ち物を強奪される、タクシーに乗っていると人気のない所に連れて行かれ運転手の仲間に襲われ持ち物を強奪される。

僕は旅を続けるだけのお金と命、そしてできればパスポートだけは守りたかった。そしてこの治安の悪さ、そして日本人の多さ、学校へ行く必要性のなさを判断した結果、グァテマラをスルーすることに決めた。



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バスの窓からは数々の山・川・自然が見える。ラテンアメリカの地域は山が多い。こんな自然が豊かでゆったりとした所で強盗に襲われるということ自体が信じられなかった。

グァテマラ

3〜4時間ほどでグァテマラシティに到着した。小さいバスターミナルのような所で降ろされ、オフィスでパスポートを提示してサンタアナ行きのチケットを買おうとした。チケットは米ドルかケツァルの現金でしか買えなかったので近くのATMでケツァルを降ろした。グァテマラのATMではスキミングと呼ばれるクレジットカードの不正請求があるという話を聞いていたためATMは使いたくなかったがどうしようもなかった。

コンビニのATMで200ケツァル下ろし、156ケツァルでサンタアナ行きのチケットを買った。

バスの中から街を見て、街の中を少しだけ歩いたが、強盗が出るような雰囲気ではなかった。ガソリンスタンドがあり、マクドナルドがあり、スターバックスがあり、ケンタッキーがあり、アメリカにありそうな普通のような街だった。グァテマラシティは全くもって危険な感じはしなかった。

バスはエルサルバドルを目指し再び出発し、数時間でエルサルバドルの国境に着いた。
僕はパスポートにスタンプを押してもらいグァテマラを出国した。

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