〜韓国のあの人〜2009年11月。僕はソウルの空港にいた。
日本で友達と会ってオーストラリアにワーホリに行く。そこでお金を貯めて旅をする。インド・ネパールにいた時にオーストラリアでワーホリすると稼げると聞いていた。早くビザを取ってオーストラリアへ行こう。日本では仕事もなさそうだし。 ソウルには友達がいる。彼女とはインドのバナーラスで知り合った。
---- バナーラスでの一言がきっかけで僕はソウルに降り立つことになった。
こんな軽いノリでした約束。
その後、バナーラスからカトマンズに入ったが、ひょんなことからネパールに沈没することになった僕は、ネパールに飽き飽きしていた。ネパールが嫌なんじゃない。この国は好きだ。人もやさしい。ご飯も美味しい。居心地は最高である。ただ、居心地がよすぎるのだ。刺激がなく、好奇心を満たすものがない。 どこか面白い国はないかと探していた。けれど、お金が底をついていた。カトマンズからチベットのラサに抜けるお金も、バンコク行きのの航空券を買うお金もなかった。 そんな中、一つだけ、お金をかけずにでいける国があった。 韓国 インドへは大韓航空の1年オープンチケットで着ているので韓国にトランジットができる。1年前にインドに向かっていた時は1日か2日くらいだけトランジットして帰ろうかと思っていただけで、たいして気にしていなかったが、この状況下で救世主となってくれる新天地である。 ただ、一つだけ問題がある。韓国はネパールに比べて物価が高い。日本よりは安いだろうが今のこの状態で何日も何日も滞在できるのだろうか?そのためには宿代を浮かさなければならない。 ネパールから彼女の携帯に電話し、もう一度本当に家に泊まっても大丈夫かを確認した。 彼女は「Sure!!ofcourse!!Welcome!!」と元気そうに言った。 その言葉に甘えてネパールでの沈没生活を早めに切り上げ、ソウルへ降り立ったのである。 韓国に着いた。コンビニとマクドナルドが見えた時、理由もなく異常な感動を覚えた。トイレに常にトイレットペーパーがあって、手を洗う水が温かい。ライターを買った時つい「いくらですか?」って店員に聞いたけどよく考えたら文明ではレジってうものがあって値段が機械に出てくるものだった。一年間もインド・ネパールという国にいたせいか、完全に忘れていた。 彼女と話したときにもらったメモを片手にソウル行きのバスに乗った。メモには「Shinchong」と書いてある。「Shinchong」がどこかは分からないがここについて電話すれば迎えに来てくれるということだった。 バスに乗っている中で夜が明け始めた。ついに文明のある国へ帰れた。うれしくてしょうがなかった。 Shinchongのバス停で降りた。まだ朝早い。寝ているだろうと思い、近くのカフェで過ごす。それにしても日本と似ている。文字と言葉が違うだけでコンビニとかテレビとか街の風景とかは完全に日本である。日本帰る前にもうすでに懐かしい感じがしてきた。 朝9時くらいになり、彼女からもらったメモにある電話番号に電話をした。Shinchong(シンチョンと読める)にはどうやら地下鉄があるようで地下鉄の駅に公衆電話が沢山あった。 ・・・何回電話しても出ない。寝ているのか? あまり何回も電話しても迷惑なのでとりあえずカフェで時間をすごした。ネパールで旅人からもらった本を読み時間をつぶす。 数十分後もう一度電話をすると彼女は電話に出た。「Sorry Sorry!!」と大きな声で言っている。朝から元気いっぱいである。
ヒュンダイビルで待ち合わせをすることになった。ヒュンダイビルは大きく「Hyundai」と書かれており、誰が見てもすぐにわかる建物であった。彼女は時間がかかりそうなことを言っていたので近くのマクドナルドによった。マクドナルドに入るのも一年ぶりである。懐かしい。
数十分後、ヒュンダイビルの前で僕らは半年振りの再会を果たした。握手をしてハグをする。日本ではあまりしない習慣だが外国人の中ではごく当たり前の習慣である。
彼女の家に行きとりあえず寝た。起きると時間は夕方6時を回っていた。 夜になり、バナーラスで会った他の友達と再開した。 ---- その後は・・・記憶がない。
ご飯もうまい、酒もうまい、たばこもうまい、すべて安い、韓国人面白い。みんな最高にいい人。毎日毎日記憶がなくなるまでお酒を飲む。そして踊る。酒と食物と楽しい会話の毎日。ここは天国かと錯覚するほどの楽しさだった。 韓国人のアツさと人情深さともてなしの心に感動した。
僕は、1年ぶりに文明の楽しさを満喫していた。 ---- そしてそれは段々と韓国に住みたいという思いに変わっていった。 ネットで調べるとどうやら韓国にもワーキングホリデーがあるようだった。ただ、オーストラリアと違いネットでビザが取れるわけではなく日本に帰国して大使館で申請をするようだ。 彼女に話をしてみた。 韓国人は日本語を話せる人が多い。年配の人は日本語も英語も分からないが、若い人は大抵日本語か英語が話せる。彼女は日本語は一切分からなかったけれど、彼女の友達が通訳してくれたし、英語は十分出来たので意思疎通に障害はなかった。本当に話が通じないときはエキサイト翻訳を使って話をした。 「韓国にワーキングホリデーで来ようと思ってるんだけど」
日本が好き。韓国が嫌い。
・・・こんな国があるとは思ってもいなかった。 バナーラスで知り合ったのが女の子4人組だったため、ほとんど女の子としか話していないけれど、僕は彼女を好きになり、彼女らが住んでいる韓国という国自体を好きになっていた。 ---- 韓国最後の日を迎えた。明日の飛行機で帰る。 いつものように昼は寝て夜から飲み始める。 彼女らと最後の別れを惜しんだ。みんなの帰るなコールがうれしく、この優しさに泣いた。
一人ひとりと握手をして抱き合ってバイバイと言った。
朝まで飲んで2時間ほど寝た。彼女はその日バイトなのにわざわざ起きてインチョン行きのバス停まで僕を送ってくれた。
日本に帰る飛行機の中、ずっと考えてた。
僕は本気で韓国ワーホリを考え始めていた。 TOP NEXT |