ケセラセラ/成田空港からの旅立ち。



〜成田〜

いよいよ出発。出発の日なのにわくわく感がまったくない。昨日の片道航空券の件で本当に入国できるかがわからず、そのことばかり考えていた。そして風邪も治っていなかった。

19時出発にもかかわらず朝9時には友達の家を出た。友達も心配してくれて「今日もし乗れなかったらもう一度私の家に泊まっていいからね」と言ってくれた。一応最後の別れとして、ハグをして成田へ向かった。

日暮里から京成線特急。もう、何回もこの特急の1000円を払った気がする。もう何回も何回も成田へ行ったということを実感した。実際何回空港に行って旅にでているんだろう?

成田は遠い。1時間半〜2時間くらいかかる。いつもこの遠さに嫌気がさしていたのに今回は思いのほか早く着いた。ちゃんとメキシコに入国できるかを考え込んでいたらいつのまにか到着していた。

11時半ごろに到着し、シンガポール航空のチェックインカウンターに行ったが誰もいない。周りの人に聞くとまだカウンターが開いていないと言われた。しょうがないのでシンガポール航空のコールセンターに電話し、カウンターが開く時間を尋ねたら16時15分と言われて愕然とした。何のためにこんなに早く来たのだろう?

それでも、Sが見送りに着てくれたのでそんなに暇はしなかった。同じ家で過ごしていた人が見送りに着てくれてずっと話してた。これが最後になるという実感はなかった。時間の感覚がおかしくなっていた。これから長期間離れ離れになるのにそんなに悲しくもないしさびしくもなかった。もちろん嬉しくもなかった。ただ、時間はすぎるというのを感じていた。

もう、三茶での生活は過去のことになっていた。過去のことをいつまでもいつまでも懐かしがっていても何も進まない。それよりもこれから何をするかのほうがより重要であった。




いよいよ、チェックイン。最初の関門である。ここで昨日の出来事を詳細に話さなければならない。片道チケットでは、まずこのチェックインカウンターで出国すらさせてもらえない可能性がある。色んなサイトでもそのケースは見てきたし、昔バンコクから中国の昆明のチケットを買ったとき出国できずに払い戻しをした経験がある。

航空会社の人に詳細に事情を説明した。ロサンゼルス経由メキシコシティ行きの片道航空券しか持っていないが第三国に抜けるキューバ行きのチケットを買ったということ。これで昨日シンガポール航空に入国できませんと言われたのでメキシコシティから日本に帰るチケットも用意したということ。

一つ一つ丁寧に説明したら航空会社の人は分かってくれ、搭乗拒否されることなく出国ということになったが、アメリカで同じように事情を説明しないといけないかも知れないといわれた。それはしょうがない、さすがに強制送還はないだろう。でも、もし強制送還になったら、それはそれで面白い気がしてきた。



その後にYが到着した。今日は二人きりで話すことはなかったが最後に彼女が好きな本と、今まで着ていた沖縄のTシャツをもらった。三茶での感動的な別れとは対照的に成田での別れははあっさりしていた。それがいいと思った。

もう、三茶で別れは終わっている。あれはすべて過去の思い出になっている。今は感情的にならずに笑顔で迎えたい。でもその思い出は決して消えることはない。

でも、本当に感謝している。あの出会いがなかったら自分はどう変わっていたか分からない。一つの出会いがここまで人を変えることができるのかと思うと本当に感動する。

いつもいつも色々な人と出会ってきて色々な人と別れてきた。その中で自分自身が変わって行き、成長してきた。中には嫌な思いをしたこともあるし悲しい思いをしたこともある。こんな日が永遠に続けばと思いながらも、永遠に続くかが不安になったり、永遠に続かない現実に傷ついたこともある。

その中で、幸せな日々、素敵な出会いがいつまでも続かないことを嘆くのではなく、その出会いがあったこと自体に感謝しようという思いにいつの日か変わった。

色んな人との出会いがあり別れがあり今の自分がいる。そしてそれはこれからも続くだろう。

ありがとう。

2011年10月。僕はメキシコへ出発した。

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