スイス旅行記





~ジュネーブにて~

朝早くニースの空港を出発し、ジュネーブに着いた。イタリア・フランスと同じようにスタンプも押されず、国内旅行のように入国を果たした。

ニースでロンドンに行くチケットを探していたとき、ジュネーブにトランジットするイージージェットのチケットを見つけた。ロンドンの病院は250ポンドまで交通費を出してくれるため、せっかくだから僕はダイレクトにロンドンに行くだけでなく、スイスにもいってみようと思った。

スイスに来るのは初めてだった、スイスは人生で何カ国めなのだろうか?ふと気になり始めた。今までの人生で行ったことがある国を数えてみると、結局途中で何カ国かは分からなくなった。だが、おそらく60カ国は超えていた。ここまで来ると良くも悪くもバックパッカーとしてはベテランになるのだなと思うと、いい気分でもあり、悪い気分でもあった。

ジュネーブはフランスに近く、ニースからは30分前後しかかからなかった。ガイドブックもなく、事前に調べることもしなかったので、ジュネーブに何があるか、空港から市内にどうやっていくか、まったくわからなかった。

スイスはEU圏にも関わらず、ユーロを使っていない国であり、スイスフランに両替をしなければならない。僕は空港の両替所で20ユーロを両替した。レートは20ユーロ=20スイスフランで、事前に調べていたレートよりもかなり悪かったが、それに気がついたのは両替した後だった。空港に泊まれば宿代はかからないことを考えれば20ユーロも使うはずがないとちょっとだけ後悔した。

7スイスフランで荷物を空港のロッカーに預け、バス乗り場に向かった。どこからバスが出ているのか、そもそも中心街に行くのにはバスなのか電車なのかもわからなかった。とりあえず外に出て、バス停だと思われるところで待っていて、一番初めに来たバスに乗った。料金をどこで払えばいいのか分からなかったので、とりあえずそのまま座っていた。

バスに乗っている途中、アルプス山脈が見えた。ヒマラヤ・アンデスに続いて、世界の山脈を偶然にも見ることが出来て、僕は一気にテンションがあがった。

中心街だと思われるところに着き、僕は何をしようか迷った。何があるかも分からず、まったく情報を集めなかったジュネーブでは、歩くことしかやることはなかった。とりあえずトラムが走っているところを歩いた。

ジュネーブはニースとは違った優雅さがあった。ここはフランスのような豪華さがなく、地味な、自然体のままの優雅さだった。普通のヨーロッパのように教会があってカフェがあって、中世ヨーロッパ風の家があって、デパートがあって、ごく普通のヨーロッパの街並みだった。

スイスはフランスとは違っていた。フランスよりも静かで、落ち着いていた。歩いている人もフランスのように豪華ではないけれど、身なりで明らかにお金持ちなのはわかった。それは今まで行った国の中で、イタリアよりもフランスよりも、ダントツに物価が高いということからも明らかだった。

ここまで来て、南米ではチリ・アルゼンチン・ブラジルの物価は驚くほど高かった。イスラエルが大体この3国と同じかちょっと高いくらいで、トルコがイスラエルよりちょっと安いくらい。ホームステイをしてきているのでその国々の物価水準が分からなくなってきてはいたが、大体感覚としてはこんな感じだった。

物価水準はイタリアで一気に跳ね上がり、フランスでさらに跳ね上がった。カウチサーフィンがなければ速やかに退散しなければならないレベルにヨーロッパの物価が高い。ユーロが安くなったとはいえ、この物価は僕には耐えられないものだった。計算してみるとカウチサーフィンでほとんど宿代がかかっていないにもかかわらず、入国してからの1ヶ月で55000円~60000円くらいは使っていた。

カウチサーフィンのおかげで自分の想定した予算よりは下回っているが、何に使っているのかが全然分からないまま、いつの間にかお金は飛んでいた。旅をする上でお金を使うのはしょうがないが節約はしなければならない。ありとあらゆる手段を使って節約して、チャンスがあればお金を得ていかなければならない。これはもはや何のためなのかもわからない、ただの文化・習慣となっていた。

そのフランスで跳ね上がった物価水準はこれまでのどの国よりもこのスイスでさらに跳ね上がった。コーヒーが一杯250円くらい、小さいパンが300円くらい、マクドナルドの一番安いハンバーガーが300円くらいした。一日で抜けるからと思いマクドナルドでハンバーガーを買った。出来るだけお腹を満たそうと、小さいハンバーガーをゆっくりゆっくりと食べた。のどが乾いてもペットボトルの水も500ミリリットルで300円くらいするため買うことは出来ない。トイレの水道水で我慢した。

マクドナルドを出ようとしたときに、優しい女性が僕に10スイスフランをくれようとしたが、断った。さすがに1000円はもらうことが出来なかった。生活が出来ないほどお金がないわけではない。なぜかこんなところで恥ずかしさが出てきて自分にまだプライドがあるのだなと思うと笑えてきた。そしてやっぱりもらっておけばよかったかなとも思ったが、もらわないでよかったと考え直した。

食べた直後はまったくお腹一杯にならなかったが、時間が経つにつれて満腹感がでてきた。そのまま僕は歩き出し、ジュネーブの中心街を歩き回ると、アルプス山脈が見えた、僕はもっと近くで見える場所を目指して歩いた。フランスでは1ユーロだったトラムも3.5スイスフランと3倍以上の値段になり、乗ることはできなかったが、歩いた方が健康にいいとポジティブに考えて歩き出した。

2時間ほど歩くと、中心街から離れ、景色は田舎っぽくなり、辺りには民家しか見えなくなった。スイスの民家はアルプスの少女ハイジに出てきそうなかわいらしい、ヨーロッパの落ち着いた雰囲気をかもし出していた。

スイス

さらに歩き続けると道路からアルプス山脈が見えるところにたどり着いた。結局ここにたどり着くまでに4,5時間歩いた。これ以上は体力的にも時間的にも近づくことは無理だと思い、結局トラムに乗って中心街に帰った。トラムは検査されなければタダで乗ることが出来る。もし検査されれば罰金を払わなければならないが、そのときはそのときに考えようと思い、トラムの椅子に座って眠った。

夜になると特にやることはなく、カフェに入った。コーヒーも高かったが、スイスフランをポンドに両替するのもおそらくレートが悪くなり、20ユーロ分のスイスフランは全部使い切ろうと思ったのであまり料金を気にしなくなった。結局お腹が減ったので大きいフランスパンとジャムを買い、お腹を満たした。

そのままカフェでしばらくネットをしていると、いつのまにか夜になった。夜には雰囲気が変わり、中心街にも人の姿が見えなくなった。僕はもうジュネーブに用はないと思い、そのまま空港にむかった。

コーヒーとフランスパンとジャムと荷物を預かってもらうロッカーで15スイスフランを使い、5スイスフランあまったが、5スイスフランはお札ではなくコインだった。基本的にコインは両替が出来ないため何かに使わざるを得なかった。僕は結局ペットボトルの紅茶を5スイスフランで買い、久しぶりに固い床に毛布を敷いて眠った。なぜか空港はうるさくあまりよく眠ることは出来なかった。

結局微妙に眠った状態でトイレで着替え、顔を洗い歯磨きをした。アジア人のイギリスの入国は厳しく、身なりが汚いと入国を拒否される恐れがあるという話を聞いていた。顔を洗った後、僕は入念にあご髭をそって、自分の持っている中で比較的旅人っぽくない服装に着替え、職業を聞かれたときはステューデントと答えようとか、自分がどういう旅行日程なのか、何故イギリスにきたのか?・・・などをイミグレで話すイメージをしていた。

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