イギリスの物価





~ロンドンの冬~

飛行機の中から外を見ると、島の形が見えた。グレートブリテン及び北アイルランド連合王国。通称イギリスと日本では呼ばれているが、イギリス、英語で言うイングランドは国はこの国を構成しているカントリーの一つでしかない。この国はイングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドの4つのカントリーからなる連合王国であり、英語ではユナイテッドキングダム・UKと呼ばれる。

僕はこの国に治験をするためにやってきた。もちろん、他のヨーロッパの国と同じように、僕はこの連合王国も僕の歴史的・文化的興味をそそられるものであることは間違いなかった。

この国は他のEU諸国と違い、まず入国審査が厳しい。この厳しさはこの旅で一番最初の、アメリカトランジットを思い出させるものであった。実際に僕の友人は入国を拒否され、バックパッカーの友人や知り合いから、イギリスの入国は厳しいということを何度も聞かされていた。

僕はライアンエアーで捨てチケットを購入し、スイスの空港で身なりを整えた。そして基本的な質問には英語で答えれるようイメージトレーニングをしていた。

ここで入国が出来ないと、治験が出来なくなり、なおかつ治験の交通費補助がでなくなる。そう考えると、是が非でも入国しなければならない。僕は緊張しながらイミグレに臨んだ。

だが、その質問は何日滞在するかの一問のみでほぼスルー状態で入国を果たした。1年前のアメリカトランジットを思い出した。

イギリスはEUに加盟していながら、ユーロを導入していない国であり、自国の通貨ポンドが流通している。僕はまたフランスかスペインに戻るだろうと考え、持っていたユーロを両替するのはやめ、新たにクレジットカードでポンドを降ろした。その間に20ポンドを拾ったりもした。お金がない僕にとって20ポンドは相当に大きかったので、僕は嬉しくなり幸先いいスタートを切れたと思った。

だが、その幸先いいスタートは一瞬で崩れた。空港から市内に向かう列車のチケットを買おうとしたところ「10ポンド」という表示が出た。

「1ポンド=130円だから10ポンドだと、、、、1300円。。。。1300円!!!!!???」

・・・ただ、空港から市内に向かうのに、1300円する。ありえない物価の高さだった。だが、列車に乗らないと市内にいけないため買うしかなかった。市内についてお昼を食べようと思ったが、小さいサンドイッチが4ポンドや5ポンドする。1ポンド130円で計算すると大体520円~650円。小さいサンドイッチだけでもこんな意味不明な値段がすることに、僕は危機感を覚えた。リアルに旅生命に危機感を感じさせるほど、この国の物価には狂気を感じた。治験で宿代が補助されるため、何とか生きることが出来るが、補助がなければ確実に退散しなければならない、僕のようなお金のない人間には一切用がない国だった。

ロンドンは寒くなってきていた。ニースでは昼は半袖でいようと思えばいれるくらい暖かかったのに、ここに来て一気に真冬になった。日本の冬に似ている。南半球で冬を迎えてつかの間の夏を終えて、一気にまた冬になった。だが、僕はそんなに冬が嫌いではなかった。自分が冬生まれだからかわからないが、冬の匂いと冬の寒さは僕を落ち着かせてくれた。

また、当たり前のように人々が英語を話すのも僕を落ち着かせた。今まですべて、スペイン語のやりとりか、お互いが慣れない英語のやりとりだった。イギリスでは英語で道を聞けば英語で返してくれ、表記も英語になる。これは地味に8年半前にアメリカに行ったとき以来の経験だった。英語が当たり前のように通じるというのは、友達と仲良くなるのは自分の能力からはきついものがあるが、ただ用を伝えるだけならばこれほど便利なことはなかった

市内のパディングトン駅から地下鉄を乗り継ぎ、宿のあるシェパーズブッシュ駅へ向かった。乗り換えをしてセントラルラインに乗ればこの駅に止まるようだった。地下鉄に乗っていると東京を思い出した。大都会。すべてが機能的で人に笑顔がない大都会。それはそれで一つの経験であると受け止めた。ただ、物価だけは受け止めることが出来なかった。地下鉄も初乗りが400円位する。ありえない。これでは治験で生活費を補助してもらってもあまり意味がない。スイスの物価は確かに高かったが、スイスが安く感じるほどにイギリスの物価は桁違いに高かった。一つ一つが高い。早くもこの国を出たくなってきた。

シェパーズブッシュ駅から歩いて数分のところに予約した宿はあった。治験で1日10ポンドまでは補助が出るため、僕は10ポンド以下の宿でなおかつレーティングがいい宿をホステルブッカーズで探して事前に予約をしていた。

チェックインを済ませ外に出ようとするが寒さに加えて天気が悪い。ロンドンの冬はいつも天気が悪いという噂は本当だったと思うと、ちょっと面白かった。僕は何も出来ないと察知し、宿でゆっくりとしていた。

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