日本語教師要請講座の勉強





~圧縮~

イギリスから病院に戻り看護師に聞くと、どうやら日本語教師の教材が届いているようだった。

僕はドクターに確認し、病院に届いた教材を部屋に持ってきてもらった。ようやく届いた。これで一歩が踏み出せる。そう考えると心は躍ったが、実際教材のDVD・CDの数とテキストの数をみると気持ちが萎えないわけでもなかった。

まずはバックアップを取ることからはじめた。旅をしながら勉強するということはできるだけ荷物を少なくしなければならない。この時点で普通の学習者とはスタートラインが違う。いや、というよりも僕はまだスタートラインにすらたっていない。この学習を終えて修了証をもらって、ある程度教えることが出来るだけの知識を持った上で、ようやくスタートラインに立てる。

一緒に治験をうけている、くろきくんの持っているマックでCDとDVDをデータ化してもらい、CDはGoogle Driveに保存し、DVDはyoutubeにアップした。データをサーバにあげることでたとえ自分の体以外のすべてのものを失っても、復元できる。

テキストは全部で6冊あった。日本語文法の基礎知識、それをどうやって教えるかという日本語教師指導要綱2冊、英語で書かれた実際のテキスト2冊。日本語で日本語を教える所謂直説法のテキスト、そして辞書と同じくらいの厚さの日本語教育全書というものだった。

僕はこれをもって旅するのはかなりしんどいと思いながら、まぁ仕方が無いかというあきらめも同時に持っていた。先方にはPDFのデータで送ってもらいたかったが無理だといわれた。

まずはDVDの映像と共に、日本語の基礎知識を勉強した。これを勉強し、課題を提出する。僕は数日間、ずっとコモンルームにこもり、ただひたすらに勉強した。

これとCDの音声と共にやる日本語教師指導要綱を同時にやり課題を提出するという形になるのだが、僕はじっくりと勉強しようと思い、また、ワードに移すことで自然とそれがバックアップになると思い、日本語の基礎知識を最初に勉強することにした。

日本語を普段何気なく使っている日本人は、あまり文法を意識しない。だが、外国語を学べば分かるように、文法とは複雑で、覚えるのが大変で、外国語の習得はかなり難しい。さらに日本語は英語と比べて文法的に複雑で、スペイン語と比べ物にならないくらい動詞や形容詞の活用が多い。また、例外も多い。 発音もイントネーションも全く違う。

僕は自分が使うだけなら日本語は簡単だが、これを外国人に、日本語を普段使うことが無い人たちに教えるということの難しさ、そしてその楽しさを意識しながらDVD上の授業を受けた。当然通信なので緊張感はリアルタイムよりはないが、それなりに真剣に受けた。そして言語は慣れだと思い知らされた。日本人はこんなにも文法的に複雑で、覚えなければならないことが異常に多いこの言語を使っているのだと分かった。それでも日本人が特に意識しないでこの言語を使えているのは、慣れ以外の何者でもなかった。

どうやら以外と課題は簡単に終わりそうだった。僕はこの後モロッコかアルジェリアで3ヶ月ほどかけてすべてを終わらせようと思ったが治験中に基礎コース・応用コースは終わらせることが出来そうだった。

だが、課題は提出してから添削を待たなければならない。添削をもらって初めて次の課題が提出できる。そのため、10ある課題をすべて終わらせ、Google Driveにいれることにした。通常2ヶ月半かかる授業を10日間で終わらせる。それでいていい加減にならず、頭には知識をすべて叩き込み、なおかつどう教えるかまでイメージをしておく。

こうして、日本語教師要請講座の圧縮勉強が始まった。

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