スペイン旅行記(セゴビア・マドリッド)





~マドリッドとの別れ~

翌日、僕はまたカウチサーフィンで知り合った人と会うためにアンナの家を出た。カウチサーフィンで多めにリクエストを送ったことで、かなりスケジュールはタイトになっていた。旅に出てスケジュールに追われるとは旅の前には夢にも思っていなかったことだった。

幸か不幸か、知り合ったセニョーラは家の昼食に招いてくれたが、そんなに時間がなくただお昼ごはんをご馳走になって終わった。そのまま僕は休もうと思い彼女の家に帰ろうとしたがアンナは急に仕事が早まり僕は家にはいれなくなった。

どうしようかと思いながらカフェでネットをしていたとき、僕はレナの存在を思い出した。ベルギー人レナはマドリッドに来てすぐに知り合ったが、「また会おうね!」と言いながら連絡が途絶えたままだった。僕が彼女に電話すると彼女は今夜一緒に遊ぼうということになり、夜、僕はラバピエスの駅に向かった。

ラバピエスの駅に行くと、レナは彼氏と一緒にいた。そういえばエステルの家の後はレナの家にお世話になると約束をしていて、急に諸事情で駄目になったが、「本当に本当に泊まる家がなかったら私の家に来てもいいから連絡して!」と言っていたのを思い出した。今はとりあえず家は問題ない。

レナと彼氏は共にベジタリアンだった。僕はベジタリアンの人に基本的に愛着があるので彼らとはすぐに打ちとけた。僕は日本食のベジタリアンバージョンを作りたいと言い、一緒に大根おろしを作り野菜にかけてご飯と一緒に食べた。旅に出てからほとんどベジ食を食べていない。久しぶりのベジ食はおいしかった。彼らも喜んで食べてくれ、僕はうれしくなった。

彼らはベルギーの学生で、レナはスペインのNPOでボランティアをしていた。彼氏はセマーナサンタのために、レナに会いに来ていた。邪魔になっているかと気を使ったが、もうすでに家にいるために急に帰るのも変な感じだった。結局アンナに今日は帰らないと連絡し、そのまま僕は彼らの家に泊まった。恥ずかしいとか図々しいとかいう気持ちがなくもなかったが、この旅の間は別にいいだろうと開き直った。いまさら・・という気持ちもあった。

彼らは素晴らしいほどに感じのいいカップルだった。若くてエネルギーがあって好奇心旺盛で、とにかくいい人だった。僕らは赤ワインを飲みながら語り合っていたらいつのまにか夜中になっていた。僕は次の日にセゴビアに行くため、また彼女らはセマーナサンタでサンチャゴデコンスポーラという聖地に行くため、次の日は早く起きなければならなかったにもかかわらず、結局起きたのは遅かった。

地下鉄の中で彼女らと別れ、僕はセゴビアに向かった。セゴビアもトレドと同じように、マドリッドから日帰りでいけるスペインの一大観光地。バスで1時間ほどで着いた。

セゴビアは雨が降っていた。マドリッドでダラダラと飲み歩いているときは晴れているくせにトレドもセゴビアも、観光をしようとすると雨が降るという不運に見舞われた。

雨はやむ気配はないと思われたが、常に不安定に降ったり止んだりしていた。スペインの春の特徴だと誰かが言ったのを思い出した。僕は晴れたときに歩き、雨が降るとどこかの屋根の下で座りながらタバコを吸い、雨宿りしながらセゴビアのアルカサルに向かった。

白雪姫のモデルになったこの城をどうしても見たかっただが、この空の暗さで、おそらくあまりいい景色にはならないだろうとあまり期待をしなかった。城の正面からの景色はすばらしかったが雨が激しく振り、長くは見れなかった。晴れたり雨が降ったりは10分おきくらいで繰り返している。

セゴビア

また、正面からだと城自体はあまりよく見えず、僕は嫌な気分になった。地球の歩き方に書いてあるアルカサルがよく見える場所に行こうと思い歩き出すと雨がまた降り出す。雨が降ると止むまで木の下に隠れて待ち、雨が止んで歩き出してまた雨が降り出すとどこかで雨宿りを、、と繰り返した。

少しだけ長時間晴れた時にしばらく歩いているとまた雨は降り出し、僕はたまたまあった教会の中に入り、ひたすら座っていた。何もすることができずただ雨がやむのを待った。本気で嫌な気分になりマドリッドに帰りたくなった。

だが、次に雨がやんだ瞬間にアルカサルの上に虹がかかった。その後雨はふらなくなった。僕は一気にテンションがあがり、城がよく見えると思われる高台に上り一人で城とその裏の雲に覆われた綺麗な夕日をずっと見ていた。

僕のテンションは最高潮に達し、写真を何枚も撮りながら、むしろ雨が降ってくれてありがたいと、数分前と間逆のことを思った。

「旅をしていてよかったと思えるのはこういうときだな、留学とかワーホリとかと違う、あくまでも世界一周旅行、そんなスタイルの旅にはなっていないけど、現地人と絡む旅も素敵だけど、こういう素晴らしい景色を、世界の色々なところで見れるのはやっぱりバックパック旅行だな」と心の中でつぶやき、旅をしていてよかったと心底思った。

セゴビア

セゴビア

セゴビア

セゴビア

セゴビア

セゴビアからマドリッドに戻り、アンナの働いているバーで彼女と一緒にビールを飲んだ。彼女はものすごいいい人だった。酒を奢ってくれ、食べ物をおごってくれ、何でこんなにいい人なのだろうと思えるほど、ありえないほどいい人だった。僕は何度もありがとう、ありがとうと言った。

スペインは食べ物が美味しい。どこに行ってもバーがあり、そこでスペイン名物のオリーブや生ハムやサラミをつまみにビールやワインを飲む。仕事がなければ昼間からでも関係ない。こういう文化は僕を疲れさせたものの、結局は僕はスペインが好きにならざるを得なかった。美味しいお酒と美味しい食べ物と、スペイン人に囲まれた僕は、疲れた疲れたといいながら結局は、冷静に考えればありえないほど幸せだった。僕はまたも酔っ払い一人でタバコを吸いながらこの食べ物・お酒・スペイン人、そしてスペインを満喫していた。感謝の気持ちにあふれていた。



翌日、僕はマドリッドを出ることにした。夜行バスでセビーリャに向かうため、昼間はエヴァとアンナと一緒にいた。彼女らと一緒にいるだけで楽しかった。彼女らは本当にいい人だった。僕は以前にチャイナショップで買ったラーメンをプレゼントした。これくらいしかできることはなかったが、僕はとにかくありがとうという形を作りたかった。

最後に僕は以前に会ったエルヴィラと再開し、その友達も一緒にバーで飲んだ。ビールと一緒に肉を食べ、会話を楽しんだ。彼女らもまた日本が好きだったため、会話は進んだ。

最後の最後まで僕はスペイン人に囲まれた。マドリッドと言うスペインの首都で、僕は毎日のようにスペイン語を話し、毎日アルコールを飲み、スペイン料理を食べ、究極に疲れはたまった。

だが、こんな風に疲れがたまるのは幸せ以外の何者でもなかった。

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