アルバニア旅行記





~悪雰囲気~

気がついたら朝になっていた。僕は毛布をバックパックにしまい、アルバニア入国の準備をした。

観光に関して何も情報がない国アルバニア。ガイドブックもなければ地図も持っていない。ただ、ここではカウチサーフィンができたため、とりあえずカウチサーフィンのホストと約束したアメリカ大使館に向うため、ドゥレスから首都のティラナに向かった。

物価は一気に下がった。都市間を移動するバスはたったの1.5ユーロだった。僕はバスに乗りしばらく眠っていたらいつの間にかティラナについていた。

個人商店のような場所でアメリカ大使館の場所を聞き、歩いてアメリカ大使館に向かった。バックパックを持って歩くのは大変だったが、とりあえずベッドで眠れるという目標のためにひたすら歩いた。

アメリカ大使館は広かった。僕はどこに行けばいいかわからなかったため、近くのカフェからスカイプを使ってホストに電話をした。

ホストは流暢過ぎる英語でまくしたてるように話した。僕はこの人が何を言っているか一切わからず、また、アメリカ大使館の近くだからか、突然警察がやってきた。僕は警察にパスポートを渡し、いくつかの基本的な質問に答えた。どうやらアメリカ大使館はセキュリティーが厳しく、近くで電話をしてはいけないということだった。

もう一度ホストに連絡すると、どうやらこの人はアメリカ人のようだった。何を言っているかわからずとりあえず、ゆっくりしゃべってくれと何度いっても聞かず、おそらく彼女が言っているであろうアメリカ大使館の目の前のところに行ってみたが彼女はいなかった。

しばらくしてもう一度電話すると「なぜアメリカ大使館の前にこなかったんだ!」とホストは突然怒りだした。早口の英語で、ものすごい剣幕でベラベラと話している。ちょっと何かいおう落としたら「話を聞け!」とまた怒りだす。

僕はこの人は完全に地雷だと感知し、即電話を切ってメールで「ほかのホストのところにいきます。会えなくて残念でした。またいつか。」と言った。頑張ればまだ家に泊まるチャンスはあったかもしれないが、あえてもうこの人の家に行くのはやめた。いくら宿代がタダになるとはいえ、こんな突然怒りだすような人間とコミュニケーションをとるのは絶対に嫌だった。

初めてカウチサーフィンで地雷を踏んでしまったが、即効で処理をしたため、大して被害はなかった。こんな人間はもう二度と会うこともなく、相手にする必要もないと思い、僕は歩いてネットカフェを探しティラナの安宿を探した。

アルバニアの物価は相当安いにもかかわらず、宿代だけは西欧と大して変わらなかった。僕はがっかりしながらもこの宿に泊まらざるを得なかった。

宿を探し歩き回るが、まったく見つからない。以前のように架空の宿ではないかと心配になった。周りの人にを聞いても英語が通じない。住所を見せてもわからないというようなポーズをされ、結局ホステルブッカーズの地図だけを頼りに歩き回った。2日連続でベッドで眠っていないせいか、多少疲れが出てきた。

宿にたどり着き少しだけ休んだ。宿だけは快適で、僕はベッドで眠ることができるという喜びをかみ締めた。

アルバニアの雰囲気は悪かった。うまく表現できない雰囲気の悪さ。以前にネットでアルバニアについて調べたとき、「経済が崩壊した国」「鎖国していた共産国」「ヨーロッパの北朝鮮」「ねずみ講で破綻した国」、、、とかなり大きく問題のある国だということはわかっていたが、ちょっとだけキューバのような桃源郷的な期待をしていた。その期待は見事に裏切られた。これほどまでひどいとは思ってもいなかった。

7年前にバルカン半島を旅行したとき、当時独立国でなかったモンテネグロとコソボを除けば、アルバニアにだけ行かなかった。なぜ行かなかったのかは覚えていないが、その時も同じような情報を持っていて怖くなっていかなかったのだろうと推測できた。

共産国の無神論の国であるせいか、街には歴史的な建物はない。街の中心部には近代的な、それでいて異常に寂れているビルしかない。かすかに小さなモスクと教会があったが、人はあまりいない。人の表情も暗い。裏路地に行けばどこかミャンマーやバングラデシュのような貧国と同じ雰囲気が漂っている。路上にはいろんなものを売っていたが、客引きをするわけでもなくアジアを旅しているような旅感も出ない。

人々はヨーロッパの中では珍しく、僕が歩いていると話しかけてきたりもしたが、アジアのような熱烈さはない。ラオスのように何もないのどかな風景と言うわけでもない、東ヨーロッパのような建物の美しさもない。ヨーロッパにおいて街に出ることがこれほどつまらないと感じた国は初めてだった。とにかくこれといった特徴がない。

唯一救いだったのは物価が安いということ、キョフテというトルコ料理が美味しかったこと、宿に人がいなく、スタッフがフレンドリーであったということだけであった。

僕はこの街にいる意味はないと察知し即刻コソボに向かった。

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