メキシコ旅行記です



〜28歳〜

スペインコロニアル様式の教会とカテドラルが幻想的に光り輝く街の中で、白人やメスティーソがアメリカ人のような暮らしをしているのとは対照的に経済的不遇を受けている先住民が路上で日用品を売っている。アメリカのように何もかもが豪勢な、それでも先住民がいることで独特な雰囲気をかもし出している国メキシコ。僕はこの光景を見飽きるくらい毎日見ていた。

そんな中、僕は28歳になった。

インディラは何故かバイトの時間を遅らせてケーキを買ってお祝いをしようとしてくれていた。彼女は今忙しい。大学のテストがあり、バイトがあり、家族と過ごす時間がある。申し訳ないということを言うと彼女は笑っていた。いつも彼女は笑いながら僕のことを「oniichan」と呼ぶ。若い彼女を見ていて自分も年を取ったものだと感じた

僕たちは一緒に近くのスーパーマーケットに行き、ケーキを買った。僕は空気を読まず自分の必要な日用品を買っていた。ケーキは大きく、とても二人では食べ切れなさそうだった。宿のスタッフにもご馳走しようと言う話をした。

宿に戻り、宿のほかの宿泊客とスタッフに誕生日の歌を歌われて、みんなでケーキを食べた。アメリカ大陸特有の砂糖がたっぷりと入っているケーキと、甘いジュースでお祝いをした。日本とは間逆の文化の中、自分以外全員メキシコ人という状況でスペイン語を話しながら暮らした。これこそが自分のやりたいことだった。このホスピタリティーは嬉しかった。

その後、一人でケレタロの街を歩いた。教会に行き、ぼーっとしていた。この日はなぜかすべてが良く見えた。天気もいい。街も明るい。

フェイスブックを見ると、何人からもお祝いのメッセージが来ていた。中南米、ヨーロッパ、インド、韓国、そして日本、、、、様々な人たちがこの旅を支えてくれている。感動した。ここまで色々な人に支えられて旅をしている自分の境遇を幸せだと思った。

家族からもメールが来た。僕を心配している様子だった。一瞬悲しくなったけれど自分で決めたことを実行している僕にとってその悲しさは断ち切らなければならなかった。普通にメールを返して普通にやり取りをした。

家族には心配かけている。それはよくわかっている。でも、僕はこの旅をやめない。地球の裏側のこの国でひたすら自分のやりたいことを続ける。それが後々どういう風になるかわからないけれど、でも、こんなことができるのは今しかない。今やらなかったら絶対に後悔する。それだけはいつも思っていた。

Yからもメールが来た。彼女は時差まで計算してメールを送ってくれていた。泣きそうになった。会いたかった。でも会いたくなかった。不思議とどこにいてもつながっている気がした。

僕は、いま何も持っていない。お金もなければ仕事もなければ社会的地位もない。中南米を旅行しているのかをしているのか留学をしているのかもよくわからない。そもそも世界一周するといいながらまだメキシコとキューバしか行ってない。日本にいるときに南米南米とあれだけ騒いでいながら、3ヶ月以上経った今、南米にいついくのかもわからない。そしてもういい年齢だ。分かってる。時々不安になる。でも、僕には仲間がいる。Yがいる。それしかない。でも、それだけでいい。それだけで生きて行っている。

毎日がのんびりしている中で、僕は若干この旅の意味が分からなくなっていた。旅ってなんでやるんだっけ?と思い始めてた。僕は何がやりたいのか?旅行をしたいのか?旅行をするだけならこんなに長期間も必要ない。日本人宿に行きながらそそくさと観光して帰ればいいだけの話。沈没は絶対にしない。では、勉強したいのか?勉強するだけなら学校へ行った方がいい。

考えていると、意味とかを考える必要もないことに気づいた。これは自分の中でいつもいつも迷っては結論付け、迷っては結論付けていることだった。

特に何がしたいということを具体的に考える必要はない。強いて言うなら、僕は色んな場所に行って現地人と一緒に「生活」がしたいだけだった。それもできるだけお金を使わず、そして業者を通さずリアルな形で。

世界中の友達とフェイスブックというサイト感謝しながら、流れるようにこの意味のわからない旅を続けることがなんとなく一番楽しいことだと確信を持った。

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