中南米・キューバ旅行記/ハバナ



〜旅人と売春婦〜

ある日夜中にハバナの街を歩いていたら、女性3人組に襲われた。体を触られ、かばんから財布をとられて、別の位置に移動されていた。別の位置に移動しただけなのでお金を取られたわけではない、ただの悪ふざけなのか?最終的に3CUCほしいと彼女は言ってきた。僕はわけも分からずに値切り、1CUCだけ渡してしまった。本当は絶対に渡してはいけない。後でトミさんに聞いたらそれはウナチーカと呼ばれるキューバの売春婦ということだった。

カーサにおいても同じような事が起こった。フンキュー君がいるときは二人いるから危ないと思ったのか、彼がメキシコに帰ったその次の日から、カーサにいる親戚の娘が体を売りにやってきた。今までは挨拶くらいしかしていなかったが父親と母親がいなくなると突然部屋に入ってきて体を買わないかと言い寄ってくる。お母さんには秘密にするから大丈夫よ!と言っていた。最後まで断り続けると特に気にする様子も彼女は去って行った。この国はどういう国なのだろう?頭の中が混乱し、恐怖を感じたが、面白くもあった。今まで行った国でここまで女性が強かった国はない。アメリカ大陸はユーラシア大陸とは勝手が違う。

そんな話をつまみにしながら、日本人同士の語り合いはいつのまにかロンというキューバのラム酒を交えるようになった。大学生の旅行者も入り4人で語るようになった。語り合いはとまらない。段々と情報交換から旅についての考えや生き方・社会についてというような話に発展していった。伊藤さんが言っていたことは印象的だった。「仕事や人は国と一緒ですよ。色んな仕事をするということや色んな人と関わるというのは色んな国に行くと思えばいいんですよ。それで駄目だと思ったらいつでも出国できますよ。」

・・この話を聞いて僕はまた一つ吹っ切ることができた。まだ日本社会に対して恐れを抱いている部分もあったけれど、やっぱり僕は間違ったことをしていない。自分の道をただただ進んでいくだけなのである。周りの人に共感を求めてはいけない。自分自身がただただ自分の道を進んでいくだけ、そこには結果もなければ評価もない。あるのは自分の気持ちだけ。

僕は旅中に日本人と話すのは、本当は好きではなかった。でも、話をするとみんな同じ考えであった。でも、話した。それぞれがマイノリティーであり、旅人の中でもさらにクレイジーな部類に入るのだと思う。それが面白かった。こういう日本人同士の語り合いは日本で出来るようで実は出来ない。僕にとっては地球の歩き方に書いてある観光地を一つ一つ回るよりも、色んな国を周ってスタンプラリーのようにするよりも、こういう一つ一つの出会いこそが価値であった。

・・語り合いはそのまま1週間ほど経過し、最後の夜に伊藤さんはロンを飲みすぎて酔っ払いながら「頑張りましょう」と言って、カリブの国を制覇するためにドミニカ共和国へ向かった。



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翌日、月曜日になり、ハバナ大学にスペイン語クラスの登録しに行ったが、とりあえず次の月曜日まで待てと言われた、トミさんの話によると入国してから10日以内に手続きをしないと入学できないらしいのだが、次の月曜日だと入国してから10日を越えてしまう。そのことを話しても「大丈夫、大丈夫」と言われるばかりでなんの保証もなかった。本当にスペイン語のクラスを取れるのだろうか?

次の月曜日まであと、数日ある。ハバナはほとんど観光をしてしまい、特にやることはない。とりあえず月曜日までトリニダーという田舎町を観光することにした。トミさんはキューバにブードゥー教があるという情報を仕入れ、僕がトリニダーにいる間にキューバの僻地に行こうとしていた。大学生の彼もドミニカ共和国へ向かった。これで日本人の旅人全員と一時的に別れることになる。

・・・キューバに来てから1週間、色んな意味で僕はこの国にボロボロに打ちのめされていた。



にもかかわらず、僕はなぜかカンクン行きのチケットの日にちを延長していた。残り50日以上キューバに滞在することになる。

犬に噛まれたら即刻病院に行かなければならないにもかかわらず普通に道端に野良犬が沢山いて噛まれる可能性もあるけど。毎日毎日チーノチーノ呼ばれるけど。売春婦にまた襲われるかもしれないけど。毎日毎日変な男が葉巻を売りつけにやってくるけど。野菜がなくビタミンが取れないけど。湿気がひどく体調壊しそうだけど。蚊が沢山いて眠れない日があるけど。部屋はかび臭いけど。部屋からムカデがでてくるけど。デング熱になるかもしれないけど。裏路地が廃墟だけど。現地人が完全にスペイン語しか知らず意思疎通が難しいけど。そしてそのスペイン語の学校に行けるかも分からないけど。インターネット環境ほぼゼロだけど。日本人ほとんどいないけど。現地人の友達いないけど。

ここにいたら完全に一人だけど。メキシコ帰れば楽になるけど。

僕はぬるいお湯よりも熱いお湯が好きだった。

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