ボリビア・アルゼンチン・パラグアイ国境



〜警官とラリッた男〜

朝方、夜行バスがタリハという街に着いたとき、バスの中には誰もいなかった。僕以外の乗客はすべて降りていて、ドアも開かない。焦りながらバスの前にいる人に話しかけたがタバコをくれとしか言われなかった。僕は庫内に預けた自分の荷物が盗まれていないか心配になった。

しばらくすると、運転手がやってきてドアを開けてくれた。荷物も無事だった。まだ朝日は昇っていなかったが、バス停は開いていた。パラグアイのアスンシオンに行きたいと警察に聞いたが、ここからアスンシオン行きのバスはなく、やはり一度アルゼンチンに行く必要があるようだった。

警察はタリハからベルメッホというアルゼンチン国境の街へ行き、そこからさらにオランというアルゼンチンの街へ行けばアスンシオン行きのバスがでていると教えてくれた。

結局、アルゼンチン国境の街ベルメッホという街へ向かうことになった。名前も聞いたことがない、ガイドブックにも乗っていない怪しい国境。こういう国境では基本的にいい事は一つもないことはわかっていたが、行くしかなかった。国境行きのコレクティーボに乗り、そのまま眠った。半分眠りながら見た景色は綺麗だったが携帯の充電が切れて写真を撮ることはできなかった。

国境の街へ着いてアルゼンチン側に渡る。持っていたボリビアーノをすべて嗜好品と飴玉に変えたが若干余った。が、国境でアルゼンチンペソに変えれるだろうと思い、そのまま国境へ向かった。ボリビア側のイミグレで携帯を充電させてもらい、少しだけ写真を取ることができた。ボリビア人は最後の最後までみんないい人だった。

綺麗な川にかかった橋を越えて、ボリビアからアルゼンチン側に入ってイミグレと税関を超える。なぜか荷物検査が異常に厳しかった。恐らくボリビアのコカの葉っぱの持ち出しが固く禁止されているからだろう。

そのまま国境のバスターミナルに向かっている途中で気づいた。両替商がいない。

やばい、ボリビアーノしか持っていない。そして多分、こんな感じの田舎では絶対にATMがない。

とりあえずバスターミナルに向かい、バスの運転手にボリビアーノで支払いたいと言った。

意外にもボリビアーノはバスターミナルで全く問題なく使え、普通のタバコ屋でアルゼンチンペソに両替も出来た。そのままバスに乗り込み、オランへ向かった。



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突然警察がバスの中にやってきた。僕がパスポートを渡すとちょっと降りろと言ってきた。「また、荷物検査か。面倒くせーな」と思いながら降りると、警察のオフィスの裏側に連れて行かれた。

「荷物検査さっきイミグレでやったばかりなんだけど」とちょっと面倒くさそうに言うと警察は「だからなんだ?だからどうした?」と静かに言った。そして「マリファナ?コカイン?」と言って来る。冗談なのか?冗談にしては目が笑っていない。

「・・・・これは本気だ。」

警察は何を狙っているのかがわからなかった。僕がマリファナやコカインを持っていてそれを見逃す代わりに賄賂をもらおうとしているのか?単純にコカの葉っぱの持ち出しを調べているのか?それとも金品を盗もうとしているのか?とにかくこの警察は何かを狙っている。

僕は一気に冷静になって状況を対処しようと考えた。ここで逆らったら何をされるかわからない。すべて警察の言うとおりにしようと考えた。言われたとおりに自分のサブバックとバックパックをすべてオープンにして荷物をすべて見せた。そしてパスポートとクレジットカードを盗まれないように全神経を集中させた。

幸いにも僕はアルゼンチンペソを400円分くらいしか持っていなかった。そしてもちろんドラッグ類も持っていない。だからなのかわからないが、警察も金品を要求しようとはせず、不機嫌そうに「早く荷物をしまって帰れ」と言った。

ようやく開放されたが、すでにバスは行ってしまっている。料金を払ったのにもかかわらず警察に止められたせいでもう一度バスの料金を払って乗らなければならなかった。段々と苛立ちは募ったけれど、警察に何もされなかっただけでもラッキーなのだと思いなおした。

もう一度通るコレクティーボをつかまえて乗り込んだ。コレクティーボの運転手はいい人だったが後ろに乗っていた若者は完全にドラッグでラリっているようだった。気持ち悪い言動を繰り返して僕に絡んでくる。僕はまた自分の荷物を抱えて全神経を集中させて守った。ラリった男はさらに頭のおかしい言動を繰り返すようになり、僕は前の席に逃げた。運転手に守ってもらうような形でコレクティーボはオランを目指した。運転手は悪いと思ったのか、料金をタダにしてくれた。

オランでアスンシオン行きのバスを探したがここにもないと言われた。フォルモッサという街に行けばあるといわれ、結局クレジットカードでフォルモッサ行きの夜行バスのチケットを取った。バス代はボリビアの5倍位した。おなかが減ったので持っていたすべてのアルゼンチンペソを使い、エンパナーダを買った。2日連続夜行バスに乗るのは嫌だったが、怖い警官とラリった男がいるアルゼンチンという国を早く出たかった。

アルゼンチン人はみんなどこか冷たかった。ボリビアと違って優しくない、目が笑っていない、そして何故か態度がでかい。無駄にプライドが高く、外国人を馬鹿にしている感じがする。早口のスペイン語でまくしたてるように話してくるがそのスペイン語がスペインのものともメキシコのものとも違う、完全にアルゼンチン語となっている。何よりもきついのはボリビアに比べて異常に物価が高いことだった。一刻も早くこの国を出たくなった。

今の予定ではもう一度アルゼンチンに来ることになる。そしてアルゼンチンで生活をする。果たしてこんな国で楽しく過ごすことは出来るのだろうか?



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朝方フォルモッサに着いた。ここでアスンシオン行きのバスを探すと、パラグアイ国境行きのバスが出ていると言う情報を得た。ようやくパラグアイに行ける。

現金をすべて使い果たしたので、僕はクレジットカードで国境行きのバスチケットを買いそのままバス乗り込んだ。バスはすぐに国境にたどり着き、イミグレでスタンプを押され、僕はパラグアイ入国を果たした。

そして気づいた。
「パラグアイの通貨、グアラニーを一切持っていない。アルゼンチンペソも一切持っていない、そしてここにもATMはない。」

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