![]() ~月の谷からの~翌日、僕らは真の目的を果たすために動き出した。僕らの目的は「宿ではなく現地人の家に泊まること」である。僕にはボリビア人の知り合いはいなかったが、めぐに昔留学していたドイツつながりで、ボリビア人に知り合いがいたので、とりあえず会いに行くことになった。 ソナスルというラパスのお金持ちエリアへミニバスとタクシーを乗りついでいき、僕らは住所を頼りにその知り合いの家を探した。知り合いの家はラパスでシェアナンバーワンのパン工場を経営している超お金持ちの家だった。僕らは家を見た瞬間に「きたぁー!!」と叫び、喜んだ。この訳の分からない仲間意識はなんなのだろうか。 インターホンを押し、めぐが持っていた知り合いの名前を行ってドアを開けてもらった。まずボリビアの家にインターホンがあることが信じられなかった。ドアを開けて出てきた人はヨーロッパのマダムのような人だった。娘がめぐと僕はテンションがマックスになりながら中に入った。 中は六本木にありそうな流行のオシャレなレストランのようだった。高級そうなソファに僕らは座った。シャンデリアが普通にある。ボリビアにシャンデリア?僕らはテンションがさらにマックスに混乱した。完全に場違いである。 お母さんと娘のフラビアとしばらく談笑した。どんな話をしたかは覚えていないが次の日にパン工場を見学させてもらえることになった。僕らは家に泊めて欲しいとお願いしたがさすがにそれは無理だった。ごく普通に、流されるように断られた。僕らの現地人の家に泊まると言う目標はあっけなくくずれさった。が、現地のシェアナンバーワンの工場見学という任務を手に入れた。
フラビアの家の近くに、月の谷という観光名所がある。僕らは大してやる気はなかったが、彼女の家から帰るついでに、ここに寄ろうと思った。
僕とめぐは世界有数の素晴らしい景色が見える所で、ふざけたサングラスをして、ドラゴンボールのポーズをとって写真を撮ったりして遊んでいた。二人とも子供のようにはしゃぎまわっていた。周りから見たら明らかに馬鹿な外国人に見えただろう。 そして、僕らはこの月の谷でジェシカと出会った。偶然の出会いだった。
ジェシカは友達と一緒に月の谷に来ていた。「クイダード(気をつけて!)」ジェシカが転びそうになったときにめぐは彼女に声をかけた。そこで少しだけ話をしたところ、彼女は日本語がペラペラで日本人の旦那さんがいて、日本に4年ほど住んでいる、僕ら以上の日本人だった。 僕らは彼女らと一緒に宿のあるセントロに帰り、彼女の友達も合流し、そのまま一緒にフォルクローレのライブを見に行った。僕らは今日一日ずっと現地人と話をしている。この環境は幸せだった。ライブはボリビアでかなり有名なバンドのものだった。 フォルクローレを聴いていると懐かしい感じがする。小学校の頃に音楽の授業で習った「コンドルは飛んでいく」や「アンデスの春」のような笛を主体にした音楽。昭和を思い出させるような郷愁の念を誘う音楽だった。僕らは2時間ほどライブを見ていた。 フォルクローレの後、めぐは疲れて帰ってしまったが、僕はジェシカと彼女の友達たちとバーに飲みに行った。そこで酔っ払った勢いもあって、家に泊めて欲しいとお願いをした。「俺らはバックパッカーだけどできるだけ現地人とかかわりたい。お金を節約したいと言う気持ちもあるけれどそれ以上に現地の生活が見たいんだよね。だからお願い!家に泊めて!」 彼女はあっさりと「いいですよ~」と言った。こうして、僕らの現地人の家に泊まるという目標は思いもよらない形で、達成された。フラビア一家とジェシカ一家という現地人との交流を図ることが出来た。これ以上の幸せはなかった。 それから、僕らはフラビア一家とそしてジェシカ一家とその友達と、めちゃくちゃに楽しい日々を過ごした。 僕は日記を見てみた。 TOP NEXT |