●●お客さま相談センターへの派遣



〜大手メーカーでの仕事〜

「こんにちは。突然だけど、いつくらいから働ける?」
新しく応募した派遣会社の面接。担当者の第一声はこれだった。



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1ヵ月後に解雇になることで旅立とうかと若干迷ったがもう数ヶ月働くことにした。もうちょっとだけやりたいことを明確にしたいと思った。後数ヶ月働いてから旅立つ。ある程度の余裕があったほうがいい。@ばるというサイトを使って派遣でオペレーターの仕事に応募した。

普段ほとんど着ることのないスーツを着て、自分の革靴をもっていなかったので家にある誰も使ってなさそうな奴を履いて、気合を入れて履歴書を書き、ちょっとだけ内容をそれっぽく見せるために盛り、緊張しながら駅に向かった。

派遣会社の面接と言えばビシっとスーツを決めたやり手のビジネスマンに厳しい目で見られながら、自分は何が出来るか、どういうスキルがあるのか、なぜここで働きたいのか、自己アピール、、、などをするものだと思っていた。



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池尻大橋の駅で担当者と待ち合わせをした。担当者はおじさんだった。いや、おじいちゃんだった。そして駅の近くのカフェでこの一言から始まる面接(?)は始まった。 名刺には「代表取締役」と書かれてた。え?この人社長!??

・・・・「で、いつくらいから働けそう?」
「え?いつからって、、まぁ一応今バイトしているので来月くらいからで、、、、」
「うーん、、、、、まぁ●●の仕事なんだけど、明後日から研修に来てくれない?」
「え?それって、、、、採用ってことですか?」
「うん、採用だよ。で、明後日からの研修これそう?」
「もちろん、バイト休んで来ます。」
「じゃあ、決まりだね。よろしく!」

もう本当のことを言ってしまおうか。このまま採用されると後々面倒なことになりそうだ。

「僕、実はこれから海外に行きたくて、いまお金を貯めているんです。ちゃんと働きますけど●●みたいな大きな会社で働いている人とは雰囲気が違うと思います。あと、そんなに長く働けないです。大丈夫ですか?」
「そうか、一応長く働くことになってるからそれは●●には黙っておいてな。」
「あと、社会保険と厚生年金は辞めてください。僕には必要ないです。」
「それは駄目だよ。そこは会社としてしっかりしないと」
「それだとお金を貯めるのに苦しくなります。それだったら労働時間を延ばしてもらえないでしょうか?」
「それは派遣先と交渉するからちょっと待ってて。じゃあ、とりあえず明後日!!!」

・・こうして面接(?)は終わり、●●という超大メーカーのお客さま相談センターで仕事をすることになった。こんな奴がこんな超大メーカーで働いていいんだろうか?逆に心配になった。




2日後、お客さま相談センターでの仕事は始まった。●●と名のつく歴史ある大会社での仕事。緊張していた。研修もしっかりしているだろう。ちゃんと働かないと駄目だろう。さすがに天下の●●だし。初日は特に気合入れないと。

・・という緊張は入室して2分で消えうせた。

まず、最初に注意されたのは
「これからタイムカードに書く派遣先の名前は「●●○機」だから。「○気」じゃないからね。」あと「お客様相談センター」じゃないから。「お客さま相談センター」だからね。」気をつけてね。」ということだった。

で、トイレはここで、ここが喫煙室で、ここがお弁当食べる場所で・・・

・・社会科見学か?
というかこれで時給は発生しているのか?
あまりに仕事とはかけはなれている内容のため、研修が終わった後、電話した。
「あの〜今日の研修って時給出ているんですか?」
「うん、もちろん。」

・・・なんだこの仕事。楽勝過ぎるぞ。全体的な雰囲気がゆるすぎる。今までの人生での仕事ってなんだったんだ?というかここはなんだ?昭和の役所か?

その後、2週間ほど商品の研修を受けたが、冷蔵庫だとか掃除機だとかテレビだとかエアコンだとかの商品知識の研修であったが研修講師が高齢であからさまにやる気がなかったためあんまり内容は理解できなかった。質問すると「いいよいいよそんな細かいこと。大丈夫だよ!」と言われる。そしていまだにどういう仕事をするのかも詳細を聞かされていない。研修中、予定時間よりも早く研修講師との会話が途絶えてしまうため、こちらから話を振っていって、予定時間まで研修講師と世間話をする始末。仕事ってこんなだったっけ?お金をもらうのってこんな楽だったっけ?

電話営業のバイトも残り一ヶ月残っていてお金のためだけに出れる範囲で出ていたが即刻やめることにした。最後は「お前ずっと成績よかったから今月の成績によっては解雇取り消しになるかもしれないぞ」と言われたが、こういうバイトを大切にしない体制に嫌気がさしていた。

商品研修は終わり実務研修に入った。どうやら僕の仕事は「受付業務」ということだった。お客さまの問い合わせの「受付」をする。つまり質問されたことに答えない。質問が来たら「お客さま、そちらは商品の担当からご説明をいたします。ただいまお電話が大変込み合っておりまして○○分後にこちらからお電話いたしますがよろしいでしょうか?」といい電話番号と名前を聞き、質問内容とともにシステムに入力する。終了。これだけを永遠と繰り返す。

つい数日前まで「こんにちは!お世話になっておりますぅ!」「インターネット料金が下がる光ファイバーのご案内なんですけどぉ!!!!」とハイテンションで電話をかけ、罵声を浴びせられまくっていた仕事をしていた僕にとってこんな楽勝な仕事はなかった。

実際に電話を取り出してもすぐに出来た。簡単すぎる。楽勝過ぎる。何一つ難しいことがない。SVに「もう一人で大丈夫だね!」と言われ黙々と一人で電話応対をしていた。

研修は終わり、勤務に入った。今までは研修だったので昼に出勤をしていたが夜間勤務の契約だったらしく、14時〜20時。17時〜23時のシフト制になった。特に17時からの勤務はびっくりするくらい暇だった。6時間勤務で5時間くらい持ってきた本を読んでいた。最初に読み始めた結構分厚い本がラストになっていた。

こんなのでお金をもらっていいのだろうか??

仕事を始めて1ヶ月くらい経過した頃、SVと仲良くなった。Nさんは自分よりも年上結婚もしていた。仕事の面倒をよく見てくれ、上司として最高だった。この人に迷惑をかけてはいけないと思うようになり、日々感謝するようになった。今まで余裕がなかった分、人に感謝することを忘れていた。プライベートでもいつのまにか話をするようになった。メールをやり取りし、どうでもいい話をしているだけで楽しかった。いつのまにか僕はNさんのことが大好きになっていた。

気がついたら4月。帰国してから5ヶ月が経過した頃、経済的に生活は安定し、充実感を感じるようになっていった。

そしてそれは「こんないい生活がずっと続いていく、そうなればいいのに」って思いに発展した。

旅って今の生活に満足できなかったり、極端なこと言えば今の生活が嫌だっていうときにでるのかもしれない。逆に生活が安定し、毎日が楽しければ旅にでなくても、海外に行かなくてもいいかもしれない。

でも、この生活を破壊して、やっぱりいつか旅にでていく。理由はない。あえて言うなら、海外が好きだから。何よりも好きだから。今の生活は楽しい、でももっと楽しいから旅に出る。

今の生活を壊して海外にいったら、経済的にもきつくなるかもしれない、言葉の通じにくいところで孤独を感じるかもしれない。思ったよりも楽しくないかもしれない。見えるものは意外と少ないのかもしれない。

でも、きつくないかもしれない、仲間がいるかもしれない。今よりも2億倍楽しいかもしれない、見えるものは今の何百倍かもしれない。

そう思うとやっぱり旅に出たい。ワーホリで海外で働いて暮らしてみたい。今は今の生活を満喫する。そして周りに感謝し続ける。そしてその感謝をいつかどこかで会うだれかに返したい。

まだ、機は熟していない。でも、やっぱり僕は海外に行く。

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